酒モン ゲットだぜ!!

  酒を飲んでいて遭遇・捕獲した酔っぱらいのモンスター達、略して「酒モン」について綴っていくブログ

酒を飲んでいて遭遇したモンスター達について綴っていくブログです。 長編・短編・色々とございます。

ミュージカルのおっさん達

今回は上新庄大阪市東淀川区)で捕獲した

酒モン(酒を飲んでて遭遇したモンスター)

の話である。

 

上新庄は近くに大きな大学や高校があり、

朝夕の通学の時間帯には若い子で

なかなかに賑やかな街だが、

駅の周りにはいくつかの古い商店街があり、

地元のおっさんしか行かないであろう

飲み屋がたくさんある街だ。

その飲み屋の中で、

定期的にパトロールをしている店が

何軒かあるのだが、

そのうちの一つの店で飲んでいる時の話だ。

 

その店は立ち飲み屋で、

特に変わった料理があるとかではないのだが、

店の雰囲気とママの性格が

素晴らしく良いので、

思わず通ってしまう店だった。

 

その日、僕はビールと干物で

飲んでいたのだが、

酔っぱらって、立っているのもキツそうな、

左隣で飲んでいるおっさんが話し掛けてきた。

おっさんは、自宅は阪急電車に乗って、

1つ京都寄りの相川という駅なのだが、

この辺りに職場があって、

帰りに一杯ひっかけてるのだと言う。

その話を聞いていた、完全に泥酔して、

立っているのが奇跡のような右隣のおっさんが

そこに食いついてきた。

「え? おたく、職場が上新庄で、

    家が相川ですか?  奇遇やなぁ、

    わしは生まれが神戸で、

 上新庄には今日初めて来ましてん。」

と、全く奇遇でもない、

無関係のことを言い出した。

そして僕に

「兄ちゃんはどこの生まれ?」

と聞いてきたので、京都です、と答えると、

「そうなんや! 電車で行けるとこやん!

 兄ちゃん、大したもんやなぁ。」

と訳の分からないことで褒めてくれた。

 

そうこうしているうちに、

店は閉店の時間を迎えた。

僕が会計を済ませて帰ろうとすると、

 左にいたおっさんが、

「兄ちゃん、駅まで一緒に帰ろうや。」

 と言い出し、

右にいたおっさんも

「そやそや。兄ちゃん酔ってるから、

 一人で帰らすの心配や。」

と、これ以上の

「人の振り見て我が振り直せ」が

この世にあるのか?というレベルのことを

言い出した。

 

まぁ、二人とも陽気なおっさん達だったので、

一緒に駅まで帰ることに異存はなく、

店を出て、三人で駅に向かうことになった。

駅へ向かう道中も、なぜか僕が真ん中、

左側に左隣のおっさん、

右側に右隣のおっさんという

店内と同じ並びで歩いていたのだが、

まず右側のおっさんが、

「涼しいし、ええ気持ちやなぁ。」

と言って、河島英五の「時代おくれ」を

歌いだした。

 そして、「時代おくれ」のサビが

来ようとした時、左側のおっさんが、

「今日はよう飲んだなぁ。」

と言って、細川たかしの「矢切の渡し」を

歌いだした。

そこで奇跡が起きた。

 

右「目立た~ぬよ~うに~」 

左「つれて~逃げて~よ~」

右「はしゃが~ぬよ~うに~」

左「ついて~おいで~よ~」

 

別々の、全然違う歌なのに 

「目立たぬように連れてにげてよ」

「はしゃがぬようについておいでよ」 

と、なんか意味が通じたのだ。

右側のおっさんと左側のおっさんは

お互いの声が聞こえていないので、

この奇跡のミュージカルを聞いたのは

世界で僕だけだ。

 

駅でおっさんたちと別れた後、

僕はこの奇跡に出会えた喜びをかみしめ、

「ミュージカルの原点を見た!!」と感激し、

すごく上機嫌で、神様に感謝しつつ、

帰宅した。

 

翌朝、起きてから改めて考えたら 、

「ミュージカルの原点」でも

なんでもないことに気付いた。

 

今回捕獲した酒モン

・高揚タイプ

・レア度・・・☆☆☆☆