酒モン ゲットだぜ!!

  酒を飲んでいて遭遇・捕獲した酔っぱらいのモンスター達、略して「酒モン」について綴っていくブログ

酒を飲んでいて遭遇したモンスター達について綴っていくブログです。 長編・短編・色々とございます。

ノンアルコールビールのおっさん

今回はJR吹田駅で遭遇した

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)の

話だ。

 

その日、僕は知り合いと

吹田で飲む約束をしていたのだが、

直前で先方に急用ができたので、

仕方なく1人で居酒屋で飲んでいた。

 

駅からもほど近いその居酒屋は、

どのメニューも美味しいのだが、

全てのメニューがものすごい大盛で、

1人で食べるにはキツいくらいの量だった。

ただ、近くのお客さん同士で

「これ、おひとついかがですか?」

といった類の会話が進むので、

酒モン捕獲には最適とも言える店で、

店はいつも、酒モンハンターで満員だった。

 

いや、僕以外に誰も

そんな目的でこの店に来てないけど。

 

とにかく、そんな店で麻婆豆腐をつまみに

生ビールを飲んでいると、

隣に一人客のおっさんがやってきた。

おっさんは、今時見たことがない、

ダボダボで、派手な柄の

イージーパンツをはいていた。

おっさんは、

はじめは静かに飲んでいたのだが、

酒が進むにつれ、テンションが上がり、

店内のテレビを見ながら、

テレビの出演者に

「そんなことないわ!」

「そう言うと思ったわ!」

などと、一人でツッコんでいた。

 

これはいい酒モンだ、と思った僕は、

絶対一人で食べられない量が盛られていて、

前に友人と二人で頼んだが、

それでも少し残したことがある唐揚げを、

敢えて注文した。

しばらくして、めちゃくちゃデカい唐揚げが

6つ入ったお皿が僕の目の前に出された。

僕は大げさに

え〜っ、こんなにあるん?

食べきれるかなぁ?

と大きめの独り言を言った。

おっさんがこっちを見たので、

チャンスとばかり、おっさんに、

これ、少し食べていただけませんか?

と話し掛けてみた。

おっさんは、

「いいの?」

と言い、唐揚げを2つお裾分けして、

そこから色々と話することになった。

 

おっさんは、この辺に住んでいるおっさんで、

たまたまおっさんの勤務先が

僕の家と近いこともあり、

お互いの好きな飲み屋さんの情報交換で

かなり盛り上がった。

 

しばらくしておっさんが、

ノンアルコールビールってあるやろ?

    あれ、全く意味ないやんな?」

と言い出した。

僕が、どういうことですか?

と聞くと、おっさんは

「あれな、アルコールは入ってないのに、

    ビールっぽい匂いがするやろ?

    それやったら意味ないやろ?」

と言う。

よく分からないので、僕が

意味ないですかねぇ?

と聞くと、おっさんはこう言った。

「他人に、ビールを飲んだことを

    バレたくないから、

    ノンアルコールビールを飲んでるのに、

    匂いでビールを飲んだって

    バレたら意味ないやん。俺、この前、

    こっそりノンアルを飲んで帰ったのに、

    嫁はんに、ビール飲んできたやろ?って、

    バレたんや。な? 全く意味ないやろ?」

 

いや、おっさん!

ノンアルコールビールって、

ビールを飲んでるのがバレないために

開発されたもんとちゃうで!

 

そう思ったが、特にツッコまずに、

なるほど、と納得したような返事をすると、

おっさんは新たなビジネスアイデア

出してきた。

 

「だからな、俺、考えたんや。

    アルコールは入ってるけど、

    ビールの匂いがしない、

    ノンビールスメルビールを発売したら、

    売れるんと思うんや。

    仕事中に酒は飲みたいけど、

    上司にバレたら困る人とか、

    需要はかなりあると思うんや。」

 

僕は、

そこまでしてアルコールを飲みたい人は

若干、病気のような気がするな、

と思ったが、

こっちも酔って楽しくなっていたので、

それ、良いですね!

と答えた。おっさんは嬉しそうに、

「そやろ?  絶対にいいと思うんや。

    ビール会社に売り込んだら、

    いくらかアイデア料をもらえるやろ?」

と言った。

そして、どえらいことを言い出した。

「よし!  今から2人で

    アサヒビールに言いに行こ!」

 

たしかに、JR吹田駅の北側には

アサヒビールの大きな工場がある。

ただ、あんな大企業が、

こんな酔っ払い二人がいきなり行って、

話を聞いてくれるとも思えず、

僕が返事に困ってると、おっさんは、

「お愛想して!」

と、勝手に言い出し、

二人でアサヒビールに向かうことになった。

 

そして、アサヒビールの前に着いたが、

深夜に近いこともあり、門は閉まっていた。

僕は、心の底からホッとしたのだが、

おっさんはめちゃくちゃ悔しがり、

アサヒビールも、ものすごい

    ビジネスチャンスを逃したな!」

と捨てゼリフを吐き、

2人でラーメンを食べた後、別れた。

 

帰りの電車で僕は、

もし、アサヒビールの門が開いてて、

たまたま偉いさんがいてたら

どんな展開になったのかを想像した。

 

「それ、いいですね! 

    すぐに商品化しましょう!

    つきましてはアイデア料として

    こちらをお納めください。」

アタッシュケースの中には

見たこともない量の札束が・・・。

 

そんな未来は全く想像できなかった。

そのおっさんとは、その後一回も会ってない。

もしかしたら、キリンかサッポロに

イデアが採用されて、

大金持ちになっているのだろうか?

 

で、ノンビールスメルビールって何!?

語呂が悪過ぎるやろ!

あと、ツッコミ、遅っ!

 

 

今回捕獲した酒モン

・高揚タイプ

・レア度・・・☆☆☆☆