酒モン（酒を飲んでて捕獲したモンスター）
の話だ。
名古屋にはたまに仕事で行くのだが、
その際によく泊まるのが今池だ。
安いカプセルホテルがあるのと、
いい感じの飲み屋が
いっぱいあるのが理由なのだが、
意外にも酒モンは今回が初ゲットである。
いや、「意外にも」の意味が
よう分からんけど。
とにかく、今池で飲み始めた僕は、
まずは立ち飲み屋で軽く飲み、
普通の居酒屋へとハシゴしたのだが、
この居酒屋に酒モンが出現した。
その店は、かなりくたびれた感じで、
和風の外観にちょうちんが釣られていて、
見るからに「THE居酒屋」の風情の店だった。
僕は期待と不安が入り混じりながら、
店の扉を開けたのだが、
店内はカウンターが８席くらいで、
店主のおっさんと客のじいさんが
大笑いしながら喋っている、という
まさに、ええ感じの居酒屋だった。
僕はじいさんから２つ離れた椅子に座り、
生ビールを注文した。
「え？ うちに来るのは初めて？」
生ビールを持ってくるや否や、
話しかけてくる店主。
僕が、はい、初めてです、と答えると、
客のじいさんが僕を見ながらこう言った。
「若いから風俗に行って来たんだよな？
あそこ、おばはんばっかりだろ？」
いや、じいさん！ 決めつけがひどいぞ！
勝手に風俗に行ったことにすんな！
ほんで、あそこってどこの店やねん！？
僕が、いや、行ってないですよ〜と
と答えると、じいさんは
「そうかなぁ？」
とニヤニヤし、
店主も、
「怪しいなぁ。」
と嬉しそうに笑ってくれ、
無事に打ち解けることが出来た。
その後、僕が大阪から出張で名古屋に来た時に
どこで飲んでいるか、という話や、
店主が若い頃に、
東北から名古屋に出て来た時の話、
じいさんの過去のエロ話などを
していたのだが、なぜか急に
客のじいさんが真面目な話をし始めた。
「消費税を上げるのはよくないと思う。」
さっきまで、スナックのママを口説くために、
モテる香水みたいなのを付けて
店に通っていたという話をしていたとは
思えない、真剣な顔で語るじいさん。
「物の値段が上がって、みんなが困ってる。
一見、値段が変わっていない物でも、
サイズが小さくなってたりしていて、
消費者に全部しわ寄せがいっている。」
先ほどまで、風俗でチェンジを繰り返し、
最後に怖い人にお尻を蹴られたが、
お金はちゃんと返してくれたと、
嬉々として語っていた口と
同じ口から出たとは思えない、
まともな意見を述べるじいさん。
だが、このじいさんはやはり酒モンだった。
この後、訳の分からないことを
言い出したのだ。
「この前、２ℓのペットボトルの水を
買ったんだけど、
家に帰って表示をよく見たら、
1.5ℓしか入ってないんだよ。
増税後、知らない間に、
中身がめちゃくちゃ減らされてて、
本当に驚いたよ。」
いや、じいさん！
被害妄想がひどいぞ！
どう考えても、じいさんが買ったのは
「1.5ℓのペットボトルの水」やと思うぞ！
その後、このじいさんと、
またこの店で再会することを誓い合って、
店を出ました。
今回捕獲した酒モン
・誤解タイプ
・レア度・・・☆☆☆
