今回は、８月４日に更新した、
「逆のおっさん」との後日譚です。
全く都会な感じはせず・・・
え！？
それは「逆のおっさん」の回で読んだって？
じゃあ、そこは端折ります。
あの「平成のキムチ爆食い事件」のあと、
同じ居酒屋で「逆のおっさん」とは
何度か顔を合わせていた。
とはいえ、おっさんは、
別にいつも僕の隣に座ってくるわけでもなく、
たまたま僕の近くの席に座ったら喋る、
くらいの距離感だった。
だが、その日は、
他に空席があるにもかかわらず、
おっさんは僕のすぐ横に座り、
ビールとキムチを頼んで、飲み出した。
約一時間ほど、大した会話もせずに
飲んでいたのだが、
おっさんはたまに溜息をついていた。
どうしたのかな？と思いながら飲んでいると、
しばらくして、おっさんは
深刻な顔で切り出した。
「なぁ、ちょっと相談があるんやけど。」
かなりハードルが上がる切り出しに、
僕は警戒したのだが、おっさんの相談事は
大したことないものだった。
「明日、草野球があるんやけど、
人数が足らんから、来てくれへん？」
次の日は休みだし、
草野球をしていたこともあるので、
行くこと自体は全く問題ないのだが、
野球が上手いわけではないので、
別にいいですけど、
戦力にはならないですよ、と答えた。
すると、おっさんは
「全然ええねん。元々、経験者もおらん
弱いチームやし、人数が足らんと
相手チームにも失礼やから。
色々頼んだけど、みんなに断られて、
もう兄ちゃんくらいしか、
顔見知りがおらんねん。頼むわ。」
と泣きそうな顔で哀願する。
じゃあ行きますよ、と俺が言うと、
おっさんは本当に嬉しそうに、
「良かった〜。」
と笑顔になった。
そして、翌日のグラウンドの場所と
集合時間を聞き、その日は別れた。
翌日、当時僕が住んでいた家からほど近い
グラウンドに行くと、
おっさんとおっさんのチームの人達がいた。
僕は、昨日はどうも、
ユニフォーム、貸していただけますか？
と明るく聞くと、おっさんは
「え？ どちらさんでした？」
と、「怪訝」を絵に描いたような顔で答えた。
いやいやいやいや！
昨日、あんなに喜んでたやんか！
そう思った僕が、
昨日、野田の居酒屋で
メンバーが足らんからと
草野球に誘われたんですけど・・・
と言うと、
「あぁ、そういえば、そうでしたね。」
とあり得へんくらいの低いテンションで、
いつもとは全く違う敬語で答える。
これだけで嫌な予感がプンプンするのだが、
おっさんのチームの人数を数えると、
なんと12人いた。
完全に邪魔者やと悟った僕は、
人数が足りてそうやから、
僕は帰っても大丈夫ですか？
と聞くと、おっさんは
「せっかく来てくれたのに、
申し訳ないから試合を見ていって。
終わってから一緒に打ち上げに来てよ。」
と言い出した。
素人のおっさんの草野球なんか
全く見たくないが、
いや、帰ります、と言って帰るのも
なんか角が立つし、
仕方なく、残ることにした。
おっさんチーム同士のグダグダの野球を
ベンチの特等席で見て、
試合終了後に、チームの人達と
駅前の中華料理屋に行った。
生ビールで乾杯して飲み出したのだが、
おっさん以外の知り合いもいないし、
当然だが、みんながさっきの試合の話を
するので、試合に出ていない僕は
全く話題に入れない。
唯一の顔見知りのおっさんは、
離れた場所に座っていたので、
僕は知らんおっさん達の
野球の話を聞きながら、
ひたすらビールを飲むことになった。
1時間ほどで打ち上げも
終わりを迎えたのだが、
最後、普通に割り勘だった。
おい、おっさん！
せめて俺の分は出せよ！
こっちは休みの日におっさん同士の
下手な野球を見て、
会話にも入れずに飲まされてんぞ！
そう思った時、おっさんが近付いてきた。
おっさんは真っ赤な顔で、
満面の笑みでこう言った。
「兄ちゃん、今日はありがとう。
助かったわ。また野田で飲もうな。」
全然助けてないし、
割り勘も腹立つけど、
もう、可愛いから許す。
僕は前回と同じく、そう思った。
今回捕獲した酒モン
・忘却タイプ
・レア度・・・☆☆☆☆
