濃い店で飲んでいると、
たまに出会うのが、クイズを出してくる
おっさんだ。
ベタなのが、
「俺の仕事、何やと思う？」とか
「俺、何歳に見える？」
とかいう類の自分クイズだ。
他にも、
「安倍首相って、サラリーマンの時、
どこに勤めてたか知ってる？」
みたいな、最近、テレビで見たネタを
そのままクイズにしたものや、
何の肉か分かる？」
という中学生の時に友達の姉ちゃんの
知り合いがバイトしてて、たまたま
見てしまった秘話をベースにしたクイズなど、
様々な問題が出題される。
今回、神戸で出会った
酒モン（酒を飲んでて見つけたモンスター）も、
そんなクイズを出すモンスターだった。
その日、16時過ぎに神戸で仕事が終わり、
久々の神戸だったので、
時間は少し早いが、飲んで帰ることにした。
少しブラブラして、いい感じの、酒屋の横でやってる
立ち飲み屋を見つけ、中に入った。
割と広い店だったが、時間も時間なので、
数人のおっさんが飲んでいるだけで、
店内は閑散としていた。
閑散としているので、人のいない辺りで、
一人でゆったりと飲めばいいのだが、
新たな酒モンを捕獲する使命があるので、
一人で飲んでいるおっさんの
比較的近くに立つ。
瓶ビールを頼み、飲み始めると、
おっさんが僕の指を見てきた。
僕は若い頃、兄貴分に不義理をしたため、
小指の第一関節から先がない・・・
はずはないのだが、この日、
僕は指に絆創膏を貼っていて、
少し血が滲んでいた。
おっさんは、
「兄ちゃん、指どないしたん？」
と全く心配そうな顔をしないで聞いてきた。
僕は、大根をおろしている時に
ギザギザのとこで、
指もグリ〜んってなって、
その時に、ギギ〜って切れた、と
とても上手に説明した。
おっさんは、
「え！？ あんなもんで切れるの！？」
とすごく驚いてくれた。
普通ならこれで終わる話なのだが、
このおっさんが
クイズのおっさんであることが、
この後、発覚する。
しばらくして、17時を回ると、
店にパラパラと人が入ってきた。
すると、すっかり酔いが回ってきていた
おっさんは、僕の指を切っている側の腕を掴み、
レフェリーが勝利したボクサーの手を
挙げるように持ち上げ、
「この兄ちゃんは、何で指を切った
でしょうか〜？」
と、入ってきた客に大声でクイズを出した。
「え！？ 何で切った！？」
明らかに不信感を抱く、新規の客。
「正解は大根おろしでした〜！」
と、回答の前に答えを言うおっさん。
「あぁ・・・。そうなん？」
新規の客は、心の底からどうでもいいという
様子で応えた。
おっさんは、
「普通、カッターとか、包丁とかやと
思うやろ？ でも実は大根おろしでした〜！」
ともう一回、テンション高めに正解を言った。
新規の客はもはや返事もせず、
おっさんと遠く離れた場所で飲み始めた。
その後も、おっさんは、
来る客・来る客に、同じクイズを出し、
その度に僕はベルトを防衛した
チャンピオンのポーズを取らされる
ハメになった。
正解者はこの日は現れなかった。
今回捕獲した酒モン
・高揚タイプ
・レア度・・・☆☆☆☆
