今回は大阪駅前ビルで飲んでいて捕獲した
酒モン（酒を飲んでて捕獲したモンスター）
の話だ。
第１から第４ビルまで４つのビルがあり、
地下一階と二階に
数えきれないくらいの居酒屋がある。
夕方ともなるとサラリーマンで大混雑し、
おっさん達がビルの通路にまであふれて
飲んでいることもあるくらいだ。
そんな大阪駅前ビルだが、
あくまで「ビルの中」であり、
「街」ではないので、
「街好き」である僕は
それほど興味があるわけでもなく、
あまり飲みに行くことはない。
ただ、その日は大阪駅近辺で
打ち合わせがあり、
近くでさらっと飲みたかったので、
大阪駅前ビルに繰り出すことにした。
色々と店を探した結果、
地下二階にあるカウンター席だけの
「ザ・居酒屋」といった風情の居酒屋に入り、
生ビールとマグロの刺し身で飲み始めた。
隣の席では、スーツ姿のおっさんが
いい感じで酔っぱらっていた。
おっさんは、焼鳥をつまみに
生ビールを飲んでいたのだが、
生ビールを飲みほしたタイミングで
メニューを見て、次に注文するものを
吟味していた。
やがておっさんは店員の女の子を呼び、
生ビールの追加を注文した。
そして、店員に
「この長芋のアツアツ鉄板焼きって
どんなん？」
と質問した。
店員は
「すりおろした長芋を
ステーキ用の鉄板で
焼いたものです」
と答えたのだが、おっさんは
訳の分からないところにこだわりだした。
おっさん「アツアツってどのくらい熱いん？」
店員 「え？ どのくらい？」
おっさん「かなり熱いの？」
店員 「まぁ、鉄板で、ジュージュー
いうくらいですね…。」
おっさん「そんなに熱いやつ、
俺でも大丈夫かな？」
店員 「大丈夫ですよ。みなさん、
普通に注文されてますよ。」
おっさん「でも、そんなに熱いやつが
目の前に置いてあって、
俺、ヤケドせえへんかな？」
店員 「ちょっと、
それは分からないです…。」
あまりにも店員さんがかわいそうだったので、
僕は横から、おっちゃん、大丈夫やと思うで、
と助け船を出した。
すると、おっさんは、
「お兄さん、長芋のアツアツ鉄板焼きを
頼んだことあるん？」
と聞いてきた。
この店は初めてだし、
もちろん注文したこともないのだが、
とりあえず、
ありますよ、そんなに熱くないし、
美味しいですよ、と答えた。
おっさんは、
「熱くなかったん？ さすが！」
と、なぜか尊敬のまなざしで僕を見た。
そしておっさんはこう言った。
「でも、俺、長芋は苦手やから、
他のにするわ。」
おっさん！
ほんなら初めから、熱さにこだわるなよ！
なんか腹が立って、
僕が長芋のアツアツ鉄板焼きを頼んだ。
店員さんがこっちに持ってきた時、
僕は大げさに、美味しそ〜っ、と
言ったのだが、おっさんはこちらに
一瞥もくれなかった。
心の底から悔しかった。
今回捕獲した酒モン
・迷走タイプ
・レア度・・・☆☆☆
