酒モン ゲットだぜ!!

  酒を飲んでいて遭遇・捕獲した酔っぱらいのモンスター達、略して「酒モン」について綴っていくブログ

酒を飲んでいて遭遇したモンスター達について綴っていくブログです。 長編・短編・色々とございます。

メガネのおっさん

今回は板宿(神戸市須磨区)で捕獲した

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)

の話だ。

 

板宿は、立派なアーケードの

大きな商店街がある街で、

商店街の周りには、居酒屋がたくさんあり、

昼から飲める店もいくつかあった。

これまでに全国の色々な町で飲んできたが、

板宿に限らず、

「大きな商店街の一本・二本横の

   並行する道にたくさんの飲み屋がある」

というパターンは多いと思うのだが、

あれは、店を閉めた後に飲みに行く

商店主が多いからなんですか?

いや、誰に聞いてるんや。

 

ともかく、その日、

僕は仕事と人生に行き詰まり、

もう飲んで全てを忘れたい、と思って、

17時くらいに板宿駅に行き、

ホルモンがメインの店で飲み始めた。

缶ビールとホルモンでスタートし、

2本目の缶ビールがなくなりそうな頃に、

そのおっさんはやってきた。

短髪で、細いメガネを掛け、

黒い上下の服を着た、

貧相な蝶野正洋のようなそのおっさんは、

僕の背中側の席に座り、

缶チューハイとホルモンで飲み始めた。

しばらくして、振り返ったおっさんに

「お兄さんはこの辺の子?」と聞かれ、

僕自身は違いますけど、

母親の実家が割と近くにあります、と

オカンの実家の話をしたら、

実はこのおっさんの生家とオカンの実家が

50mくらいしか離れておらず、

同じ町内の出身だということが発覚した。

当然、話は盛り上がり、色々と話をしながら

1時間くらい飲んでいた。

 

おっさんは結構なハイペースで

チューハイを飲んでいたのだが、 

飲んでいる最中、僕には一つ、

気になることがあった。

おっさんのメガネの、ちょうど耳の上あたりに

そこそこ大きな鼻くそが付いていたのだ。

おっさんともすっかり打ち解け、

酔いも手伝った僕は、冗談交じりに、

メガネに鼻くそが付いていることを伝えた。

するとおっさんは

「え〜っ!! ホ、ホンマに!!?」

と、夕食を作っていた新婚の妻が、

会社からの電話で夫が急死したことを

告げられた時くらいのリアクションで驚き、

メガネを外した。

「いつから付いてたんやろ・・・。

 俺、朝から何件か商談しててんけど、

 大丈夫やったんかな?」

と、おっさんは外した眼鏡を見て、

過剰に心配する。

僕は、そんなん別に大丈夫ですやん、と

言ったのだが、おっさんは手帳を取り出し、

「10時に〇〇さん、14時に◎◎さん、

 16時半に△△さんか・・・。」

と今日会った人を確認しだした。

どうするんですか?と聞いたら、

「いつから付いてたか不安やし、

 ちょっと電話して確認するわ。」

と、酔っぱらっているからか、

とんでもないことを言い出した。

意味が分からないし、絶対に藪蛇なので、

やめた方がいいと何度も止めたのだが、

おっさんの意志は固く、 

一人一人に電話を掛けだした。

 

「〇〇さん、本日はありがとうございました。

 えぇ、はい、そうなんですよ。

 ところでですね、お会いした際に、

 何か気になることはありませんでしたか?」

と、聞かれた側も困る、

謎の質問をするおっさん。

「いや、私のメガネに、何か汚い物でも

 付いていなかったかなと心配になりまして。

 いや、何もなければ大丈夫です。

 はい、また、よろしくお願いします。」

と、メガネに何らかの汚い物体が

付いていたことを、

逆にバラしてしまっているおっさん。

 

結局、全員に同じ様な電話をして、

誰からも鼻くそのことを

指摘されなかったおっさんは、

安堵の表情を浮かべて、こう言った。

「よかった。助かった。

 お兄さん、教えてくれてありがとう。

 ビール、もう一本飲み。おごるわ。」

 

僕は、おごってもらった

缶ビールを飲みながら、

おっさんのメガネに

鼻くそが付いているのを指摘したことが

本当に正解だったのかどうかを

自問するのだった。

そして、夜は更けていく。

遠くで犬が吠えた。

 

純文学みたいな終わり方にしたった。

いや、純文学、こんなんとちゃうで!

 

今回捕獲した酒モン

・迷走タイプ

・レア度・・・☆☆☆