酒モン ゲットだぜ!!

  酒を飲んでいて遭遇・捕獲した酔っぱらいのモンスター達、略して「酒モン」について綴っていくブログ

酒を飲んでいて遭遇したモンスター達について綴っていくブログです。 長編・短編・色々とございます。

月がライバルのおっさん

大阪市西区九条に住んでいた頃、

年に300日くらい行っていた

立ち飲み屋があった。

僕はその店に、

勤め先よりも頻繁に通っていた。

お客さんが20人以上入れる

割と大きな立ち飲み屋だが、

自分で折りたたみ椅子を出したら、

その椅子に座ってもいいという

謎のルールがあり、

立っている人と座っている人が

混在している、という立ち飲み屋だった。

今回はそんなお店に現れた

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)

の話だ。

 

その日、僕は

その立ち飲み屋で座って飲んでいた。

お客さんは全員で15人くらい。

奥の方で飲んでいたグループは

メインのおっさんの独演会状態で、

たいそう盛り上がっていた。

そのおっさんとは僕も何度か

この店で一緒に飲んだことがあるのだが、

愉快なおっさんで、自分の面白エピソードを

人に聞かせるのが好きな人だった。

 

そんななか、別の席で飲んでいた

おっさんが急にこう言った。

「今日、月蝕やった!」

店内には、そういやそうやったなという

空気が流れ、

みんなグラスを持って外に出て、

月を見ながら飲み出した。

ただ、メインのおっさんは外に出ず、

店内で一人で飲み続けていた。

しばらくして月は欠けはじめ、

みんな、おお〜っとか言いながら、

飲んでいた。

メインのおっさんは、

この期に及んでも、なおも店を出てこない。

今から思うと、

自分の独演会を聞いて欲しい

メインのおっさんは、

みんなの注目を集めている

月に嫉妬していたのだろう。

ただ、その時はそのことに気付かず、

みんなで月を見ながら飲み続けていた。

焦れたおっさんは、

ついに店の外に出てきて、こう言った。

 

「心配せんでも、あとで元に戻るから!」

 

いや、別に月が元に戻らへんことを

心配してたんやないし!

 

月蝕が一段落した後、

またみんな店内に戻り、飲み出した。

おっさんの独演会は再開された。

 

今回捕獲した酒モン

・憤怒タイプ

・レア度・・・☆☆☆

感情移入できないおっさん

これまた、ホームグラウンドの淡路で

飲んでいた時の話。

その店はいつも常連さんで賑わっていて、

店内にある大きなテレビで

全員で同じ番組を見ながら、

感想を言い合ったりして、

ワイワイ飲むのが楽しい店だった。

そして、その店にも

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)

は出現した。

 

僕はその店に19時くらいに行き、

テレビを見ながら飲んでいた。

そのうちに常連さんたちが集まってきて、

最終的に10人近くで、

同じテレビを見ながら飲んでいた。

はじめはバラエティ番組が

流れていたのだが、

いつの間にか、

ドキュメンタリー番組になっていた。

その番組は、

20年以上前にあったある大事故で

父親を亡くした息子さんが、年月を経て、

自身も父親になり、

奥さんと子供を連れて、

父親が亡くなったその事故の現場を訪ねる、

というものだった。

事故現場で、自分の子供に、

亡くなった父、つまり子供にとっての

おじいちゃんとの思い出話をする男性。

子供たちは、会ったことがない

おじいちゃんのエピソードを

真剣に聞きながら、

最後には涙を流していた。

グダグダな酒飲みばかりの

この淡路の店でも、すすり泣きが

聞こえはじめていた。

 

そのドキュメンタリーが終わり、

店内が、なんとなく

「感動したな」という空気の中、

チューハイを何杯も飲んでいて、

泥酔気味のおっさんがこう言った。

 

「いや〜、あの奥さん、綺麗やったな。

    奥さんが綺麗過ぎて、

    そこばっかり見てしまって

    感情移入できひんかったわ。」

 

え〜っ!

今の番組見て、1個目の感想がそこ!?

泣きどころ、いっぱいあったで!

 

ただ、奥さんは本当に綺麗だった。

 

今回捕獲した酒モン

・高揚タイプ

・レア度・・・☆☆☆

すすめてくるおっさん

滋賀県の北部のある街に

大好きな焼鳥屋さんがある。

そこにはたまに飲みに行くのだが、

距離的に滅多に行けない街なので、

行った時はついでに2軒くらいハシゴして、

帰ることにしている。

今回はそんな時に出会った

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)

の話だ。

 

焼鳥屋を出て、2軒目に

その店に飛び込んだ。

カウンター5席くらいの小さなその店は、

おばさんが1人で切り盛りしている

ようだった。

店内には、おっさんが一人。

焼酎の水割りを飲んでいた。

顔は真っ赤で、すでにかなり飲んでいる

様子だった。

滅多に来ない街で、

ええ酒モンがゲットできそうだと

胸が高鳴る。

 

僕はとりあえずビールを頼み、

付き出しを食べながらメニューを見ていた。

おっさんは僕に、

「この店はあんかけうどんが美味いんや。

    食べな損やで!」

と話し掛けてきた。

焼鳥をそこそこ食った直後に

あんかけうどんはキツいなぁ、

と思いながら、

長いものには巻かれる主義なので、

頼むことにする。

いや、別にそのおっさんが

長いか短いか知らんけど。

 

僕は店主のおばさんに

「あんかけうどん、下さい」

と注文した。

おばさんは間髪入れず、

「え!?  あんかけうどん?

    そんなん作ったこともないで!」

と怒り気味で、答えた。

さらに、

「お兄さん、酔っ払ってるん?」

と怖い顔で言われた。

 

え〜っ、めっちゃ気まずいやん、

俺が酒モン扱いやん、

と思って、おっさんを見たら、

僕の方を見ないように下を向いて、

携帯をいじっていた。

一体、あんかけうどんは

どこから出てきたのか?

どこか他の店のおすすめメニューなのか?

その謎を解明したかったが、

おっさんは二度と僕と喋ろうとは

しなかった。

 

今回捕獲した酒モン

・迷走タイプ

・レア度・・・☆☆

例えがうまいおっさん

居酒屋以外でも、公園や路上で

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)

 に遭遇することがある。

なぜかというと、僕が公園や路上で

飲んでいることがあるからだ。

今回、捕獲した酒モンも、

居酒屋ではない

かなりレアな場所で捕獲した酒モンだ。

その場所とは回転寿司屋だ。

 

そこは大阪の都心部

知り合いと二人で、昼前なのに

もう飲もうかという話になった。

しかし、都心過ぎて、

こんな時間から飲めそうな店がなかなかない。

やっと見つけた昼からビールが飲めそうな

唯一の店が、その回転寿司屋さんだった。

二人でその店に入ると、

まだ昼前だからか、店内は空いていた。

僕らは入口近くのカウンター席に座り、

とりあえず生ビールを飲みだしたが、

レーンに寿司がほとんど流れていない。

仕方なく、機械で注文したのだが、

それもなかなか出てこない。

昼前だから、バイトが少ないのかな?

そう思っていると、

カウンターの奥の方で、

これまた生ビールを飲んでいたおっさんが

キレだした。

「おい! 早く寿司を流せ!

 こういう店はな、さっと食って、

 さっと帰れるのがええんとちゃうんか?

 いつまでも寿司が出てけえへんって

 どういうことやねん!!」

乱暴な言い方だが、内容は僕らも同意だ。

店員が出てきて、おっさんに平謝りし、

また厨房に戻っていった。

しばらくして、レーンに

何か流れてくるのが見えた。

ようやく寿司が来たか。

そう思ってよく見ると、

パフェが6つ連続で流れてきていた。

おっさんは、先ほどの2.5倍くらいの声で

 

「おい!!!

 俺の言うてる意味が分からんのか!!

 俺が流せって言うたんは寿司や!!

 こんな石油コンビナートみたいなん、

 いらんわ!!」

 

たしかに6つ並んだパフェは、

石油コンビナートのようにも見えた。

 

今回捕獲した酒モン

・憤怒タイプ

・レア度・・・☆☆☆

勘違いのおばはん

これは大学時代の話。

僕は当時、神戸市に住んでいた。

大学生なので、当然お金はなく、

いつも、唯一の友達と二人で

一本60円の屋台の串カツ屋で飲んでいた。

その屋台にメスの 

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)

 が現れたのだ。

 

そのおばはんは、おそらく50代。

片手に500mlの缶ビールを持ち、

かなりフラつきながら、

僕らのところに近寄ってきた。

そして、いきなり僕に向かって、

「こら~っ!」

と怒鳴ってきた。

もちろんビックリはしたが、当時から

この手のトラブルが大好物だった

僕の胸は高鳴った。

これは面白いことになりそう。

そう思って、おばはんの方を見ると、

おばはんはフラつきながら、

僕をにらみつけ、大声で言った。

 

「お前がうちの娘のことを

 パ🔴パンやって言いふらしたから、

 娘の結婚が破談になったやないか!!」

 

あまりにも荒唐無稽な話に、

僕は苦笑いした。

屋台にいた他のお客さんも、

「この子、変なおばはんにからまれて

 かわいそうに・・・」

という空気が流れていた。

僕は一緒に飲みに来ていた

親友の方を向き、

「やれやれ」という表情をした。

だが、その時、親友は

哀しい目で僕を見つめて、こう言った。

 

「そんなことを言いふらしたら

 アカンやんか・・・」

 

大学時代の唯一の友達は、

ずっと一緒に過ごしていた僕よりも、

缶ビールを持って、フラフラしている

初めて会ったおばはんの方

を信用したようだった。

 

家に帰って、ちょっと泣いた。

 

※一部の単語に自主規制を入れております

 

今回捕獲した酒モン

・誤解タイプ

・レア度・・・☆☆☆☆

見る目がないおっさん

多分、魚市場で働いてる人や

漁師さんがたくさんいて、

その人達は昼前に仕事が終わるからだと

思うのだが、明石には

昼前から飲める店が結構ある。

そんな港町にも

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)

が出現した。

 

その日も、月に2・3回ある

“ 何もかもが嫌になる日 ” が来て、

昼から飲もうと明石の街にやって来た。

駅を出た時に、

そういえば、現金があまりなかったと思い、

駅前にある某銀行のATMに行った。

そこには、おそらく80歳くらいの

お婆さんがいて、ATMの前に立っていた。

お婆さんが立っていた隣のATMで

お金を引き出し、出て行こうとした時、

おばあさんが話し掛けてきた。

「これ、どうするのか分かる?」

お婆さんはATMの操作方法が

分からないみたいだった。

話を聞くと、ATMに付いている電話で

銀行の人と色々とやり取りしたみたいだが、

それでも使い方が分からず、窓口があるお店に

来てくれと言われたそうだ。

「すぐにお金がいるから、

    今、引き出したいねん。

 お兄ちゃん、ちょっと、やってくれへん?」

いくら頼まれたとはいえ、

人のカードと暗証番号で

お金を引き出すのは、さすがにマズいので、

やんわりと断ったのだが、

おばあさんは何度も頼んでくる。

仕方なく、暗証番号を打つところは

おばあさんにやってもらうということにして、

ATMを操作してあげた。

無事にお金を引き出せたお婆さんは、

何度も何度もお礼を言ってくれた。

「お兄ちゃん、このまま別れるのも

    名残惜しいから、ご飯でも行かない?」

そう言われたので、僕は

今から飲みに行くつもりだったので

それなら一緒に行きませんか?と誘ってみた。

「じゃあ、そうしましょう!」

お婆さんはすごく喜んでくれて、

二人で海の近くにある食堂に行った。

昼なのに、メシのおかずで一杯やっている

おっさんたちで食堂はそこそこ満員だったが、

運良くテーブル席に座ることができた。

「さっきのお礼におごるから、

 なんでも好きなもの頼んでね」

お婆さんに言われて、僕は瓶ビールと刺身、

タコの天ぷらを頼み、

お婆さんはうどんを頼んだ。

グラスを二つもらって、お婆さんと乾杯し、

飲み始めた。

お婆さんからは亡くなった旦那さんの話や

名古屋で働いている息子さんの話を聞き、

僕はお婆さんに聞かれるままに

仕事の話や親の話をした。

一時間くらい過ぎた頃、

隣の席で、焼き魚を肴に飲んでいた、

いい感じで出来上がっているおっさんが、

こう聞いてきた。

 

「お二人、ご夫婦ですか?」

 

違うわ!

さすがに年が離れすぎやろ!

ずっと “ お母さん ” って呼んでたやないか!

おっさん、酔ってるとはいえ、

見る目なさ過ぎやろ!!

 

でも、お婆さんの口座の残高を

チラッと見てしまっていた僕は、

結婚してもいいかも、と思った。

あとで絶対に、名古屋で働いてる息子さんと

相続のことで揉めるけど。

 

 

今回捕獲した酒モン

・誤解タイプ

・レア度・・・☆

僕を産んだおばはん

これまで、オスの

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)

しか紹介してこなかったが、

当然、メスの個体も生息している。

ただ、数としては圧倒的にオスが多いのも

事実だ。

いや、僕の勝手な言い分やけど。

 

今回は、初のメスの酒モンを紹介する。

そのおばはんは、約10ヶ月の間、

僕を自分のお腹の中に居候させていた

おばはんで、その後も、

僕のおむつを替えたり、

僕の食事を作ったり、

僕の学費を支払ったり、

何かと世話を焼いてくれた。

簡単に言ったら、僕のおかんである。

 

久しぶりに実家に帰ったその日、

おとんとおかんと三人で飲んでいた。

高校の時に遊びに来た友人が、

「親ってあんなに喋るもんなん!?」と

驚いたほど、僕の両親はよく喋る。

しかも酔っぱらうとさらに拍車がかかる。

その日も二人は、とっくに眠くなっている

僕を無視して喋り続け、

既に深夜1時過ぎになっていた。

テレビでは、バラエティ番組が流れていて、

その頃大人気だった

レーザーラモンHGが映っていた。

それを見たおかんは言った。

 

「この人、下品やから嫌いやわ。

 スーパーハード ハードゲイ

 

どんだけハードゲイやねん!

ちゃんと名前覚えろや!

 

そんな母親が他界して、6度目の夏が来た。

まだ生きてるわ!

 

今回捕獲した酒モン

・誤解タイプ

・レア度・・・☆