酒モン ゲットだぜ!!

  酒を飲んでいて遭遇・捕獲した酔っぱらいのモンスター達、略して「酒モン」について綴っていくブログ

酒を飲んでいて遭遇したモンスター達について綴っていくブログです。 長編・短編・色々とございます。

内野のおっさん

阪急 淡路駅近辺をホームグラウンドにする前に

ホームグラウンドにしていたのは新開地だ。

母親の実家が近いこともあり、

幼い頃からよく知っている所で、

神戸なのに、お洒落な感じは全くなく、

ホンマにいい感じの街である。

 

今回の「内野のおっさん」は、

そんな新開地で出会った

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)

である。

 

その日もまた

何もかもが嫌になり、

昼から飲める中華料理屋で、

1人で飲んでいるその時、

紹興酒を飲んでいたおっさんが、

急に大声で笑い出した。

店内のテレビには、高校野球の予選の模様が

流れていたのだが、どうやらそれを見て

笑い出したようだ。

 

「ちょっと、兄ちゃん、見て見て!」

 

隣に座っていた僕に、おっさんは言う。

おっさんの指さす先はやはりテレビ。

そこには、バッターボックスに立つ

選手の姿が。

 

いや、別に、普通の高校球児やけど、と

思っている僕におっさんは

「名前見て、名前!」

とハイテンションで笑いながら言う。

画面下の方を見ると、

選手の打率・本塁打数などが書かれており、

その下には

「センター 内野」

と書いてあった。

普通に「うちの」って苗字なのだろう。

 

「センターやのに、内野(ないや)やって!」

 

おっさんは僕の肩をバンバン叩きながら、

大爆笑していた。

店内の人全員から

「いや、そんなに面白くないけど・・・」

という空気が出ていた。

おっさんは、その空気に気付かず、

その後も楽しそうに飲んで、

やがて帰っていった。

 

今回捕獲した酒モン

・高揚タイプ

・レア度・・・☆☆

外野のおっさん

今回もまた、ホームグラウンドの

淡路で飲んでいる時に見つけた

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)

の話だ。

 

その店はおばさんがやっている

カウンター7席くらいの小さな店だが、

料理が美味しく、いつも満席だった。

その日も満席で、店内はおっさんの

喋り声で満ち溢れていた。

話題は、大谷投手のことだった。

プロ野球の世界で、投手と打者を

どちらもやるという前代未聞の

二刀流への挑戦が成功するかどうか。

僕も含め、一刀流でも成功してない

人間どもが議論していた。

いや、おっさんは成功してるんかも

しれんけど。

 

みんな酔ってきて、議論も白熱しはじめる。

あるおっさんは

「絶対無理。プロの世界はそんなに甘くない」

と、至極もっともな意見を言う。

別のおっさんは

「難しいとは思うが、大谷の姿勢を見てると、    

   彼ならできると思う」

と、お前、大谷の何を知ってるねんと

ツッコみたくなる意見を言う。

そして、満を持して、また別のおっさんが

「色んな意見はあるけど、

   本人がやりたいならやればいいと思う。

   外野がとやかく言うことではない!」

と、ビシっと言った。

店内一同が、そらそやな、という

空気になったと思ったその瞬間、

今まで、全く喋らずに、

我々の話を聞いていたおっさんが口を開く。

 

「そらそや。大谷はピッチャーやねんから、

    外野手からごちゃごちゃ言われたら

    投げにくいわ。」

 

いや、外野って、そういう意味とちゃうし!

日本ハムの外野手、誰も何も言うてへんし!

 

結局、そのおっさんの意見は黙殺された。

後に大谷はメジャーリーグでも

二刀流に挑戦することになったが、

その時、エンゼルスの外野手達も、

誰も何も言わなかったのだろう。

知らんけど。

 

今回捕獲した酒モン

・誤解タイプ

・レア度・・・☆☆☆

いち早く解禁されたおっさん

ベロベロに酔っ払っていたとしても

暴れたり、人に迷惑をかけるのは

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)

ではないと、自分の中で定義している。

つまり、愛すべき酔っ払い = 酒モン 

だと個人的には思っている。

 

今回もすごく愛すべき酔っ払いの話だ。

僕のホームグラウンドの一つである

淡路で飲んでいた。

よく勘違いされるのだが、淡路島ではなく、

大阪市東淀川区の淡路だ。

この街には、大好きな店が数軒あるのだが、

11月初旬のある日、そのうちの一軒、

上品なおばさんがやっている飲み屋で

おでんをつまみに飲んでいた。

突然、店のドアがガラっと開いた。

そこには常連のおっさんが立っていた。

おっさんは、明らかにどこかで飲んでいた様子の

少しうつろな目と赤い顔で、

告白するために、後ろに花束を隠し持っている

人みたいなポーズで立っていた。

店主の上品なおばさんが

「どうしたん?」

と聞くと、おっさんは満面の笑みで、

 

「今日がボジョレーヌーヴォー

 解禁日やったみたいでな。

 そこの酒屋で買って来たんや!

 みんなで飲もうや!」

 

と言って、背中に隠していたワインの瓶を

我々に見えるように差し出した。

ただ、みんなの顔に「?」が浮かんでいた。

 

ボジョレーヌーヴォーの解禁ってもっと後、

 11月の真ん中とかじゃなかったっけ?」

 

店内の全員がそう思っていたはずだ。

そして、意気揚々と店内に入ってきたおっさんの

手に持たれたたワインの瓶には

「山梨ヌーボー」の文字が・・・。

 

店内にいる誰もが、

「おっさん、間違ってるやん!」

と思っていたに違いないが、

みんな笑顔で、おっさんの買ってきたワインを

「美味しい!」

と言って飲んでいた。

この店の常連はみんないい人ばかりだ。

ただ、常連のみんなに飲ませようと思って、

ワインを買ってきたおっさんが

一番いい人だった。

 

何、このいい話?

なんか嫌や。

 

今回捕獲した酒モン

・高揚タイプ

・レア度・・・☆☆☆

勝敗が気になるおっさん

 今まで様々な街で飲んでいて、数々の

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)

を捕獲してきた。

大体が、横で飲んでいたおっさんとか、

客と一緒に飲んでいたマスターとか、

そういった人が酔うにつれて

モンスター化していくのだが、

たまに一緒に飲んでいる知り合いが

モンスター化してしまうことがある。

 

その日、小学校と中学校の時の塾が一緒で、

予備校が一緒で、その後、

同じ大学に入学したという

すごく変則な同級生と、

阪神尼崎の焼鳥屋で飲んでいた。

店は汚いが、安くて美味しいその店は、

おっさんたちで賑わっていた。

店内では阪神・巨人戦が流れていて、

野球好きの僕と友人も

テレビを見ながら飲んでいた。

その時、かなり酔っていた友人が急に言った。

 

「あのな、風俗行ってきていい?」

 

おっさんだらけの焼鳥屋で、

プロ野球を見ていて、

なぜそんな気分になったのかは

理解に苦しむが、

とにかく行きたいらしい。

 

「30分くらいで帰ってくるから、

 ここで飲んで待っといて。」

 

そう言って友人は焼鳥屋を出て行った。

そして、約30分後、僕の携帯に

友人から着信があった。

 

「もしもし・・・」

 

友人はかなりのひそひそ声で言った。

そしてひそひそ声のまま、こう続けた。

 

「今、風俗の店やねんけど、

   違法の店やったみたいで

   警察の手入れが入ってん。」

 

え~っ!

僕は一人で飲んでいるのに、

店内に響き渡る大声で驚いた。

 

「今、客だけ奥の部屋に集められて、

 店の人は向こうの部屋で

    事情聴取されてるねん。」

 

友人はひそひそ声で、現状を伝える。

 

「それでな・・・阪神勝ってる?」

 

え~っ!

今、気にするのそれ?

そんなに阪神好きなん?

それなら今、電話してきてる携帯で調べろや!

 

その時、電話の向こうから

男性の声が聞こえた。

 

「おい! どこに電話している!」

 

絶対に警察の人だ。

その後、

「すいません」

という友人の声が聞こえた。

その後、友人と会えたのは、

約2時間後のことだった。

 

今回捕獲した酒モン

・悲哀タイプ

・レア度・・・☆☆

 

けじめのおっさん

今回は東京は立石で見つけた

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)

の話である。

僕の中では、このおっさんは

「伝説の酒モン」だ。

 

昼飲みできる下町として有名な立石に

この日、僕は生まれて初めて降り立った。

テンションは上がりまくり、

有名なモツ焼きの店から

有名な寿司屋、有名なおでん屋と

ハシゴし、上機嫌で商店街を歩いていた。

その時、伝説の酒モンに遭遇した。

 

商店街の向こうから歩いてきた

60代半ばであろうそのおっさんは、

絵に描いたような千鳥足で、

こちらに向かっていた。

そして、二人の間の距離が

まだ20メートルくらいあるのに、

完全にこちらに目線を合わせてきていた。

これがヤンキーの高校生同士なら、

「なに、メンチ切ってんだ、こらぁ!」と

ビーバップハイスクールばりに

喧嘩になるところだが、

そこは酔っ払い同士、

笑顔で近寄る。

おっさんと僕の距離が2メートルを切った頃、

おっさんがこう言った。

「兄さん、この辺でトイレ知らない?」

 

僕の家はここから西へ560キロくらいの

ところにあるので、この辺りのことは

あまり分からない。なので、とりあえず、

「駅にはトイレありますよ」

と答えた。その時、ふと目線を落とした

僕の目にすごいものが飛び込んできた。

おっさんのズボンがびしょ濡れだったのだ。

しかも左足部分だけ。

これは完全に漏らしている。

よく見たら、左足の靴もびしょ濡れである。

これはかなり漏らしている。

生まれて初めて来た街で、

いきなりこんなおっさんに話し掛けられるとは

僕には酒モンハンターの才能があるのだろう。

 

僕はおっさんの下半身を指差し、こう言った。

「おっちゃん、酔ってて気付いてないかも

    しれんねんけど、もう漏らしてるで。」

するとおっさんはこう言った。

「分かってるよ。さっき、小便に行きたく

   なったけど、酔っ払って意識がなくて、

   漏らしちゃったみたいなんだ。

   でも、今はちゃんと意識があるから、

   今からする小便は、俺のけじめだよ。」

 

このセリフを聞いて、

かっこいい〜!

と一瞬思ったが、

よく考えたら、

酔っ払っておしっこを漏らしたおっさん

だということに気付いた。

この後、2人で駅のトイレに行き、

おっさんのけじめの放尿を見て、別れた。

 

今回捕獲した酒モン

・忘却タイプ

・レア度・・・☆☆☆☆☆

 

 

大荷物のおっさん

ある日の平日、

仕事のストレスがすごいので、

昼から飲むことにした。 

場所は大阪市此花区の西九条。

かなりの下町のはずなのに、当時は

昼から飲める店がほとんどなかった。

僕の知る限り、王将ともう一軒くらい。

そのもう一軒の方の店に行き、飲み始めた。

すると、隣に大きなスーツケースを

2つも持ったおっさんが座っていた。

これこそが、本日の

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)、

大荷物のおっさんだ。

こういう気軽に昼飲みできるような

居酒屋に、ここまでの大荷物を

持って来る人は珍しい。

基本、近所の人しか来ないからだ。

その珍しく大荷物を持っているおっさんは、

ものすごく暗い顔で飲んでいる。

もしかして、夜逃げかな?

それなら話をしてみたいな。

そう思っていると、おっさんが

話し掛けてきた。

 

「ちょっと、ここのホテルに電話して、

    振込先を聞いて、俺の代わりに

    銀行で振込してきてくれへん?」

 

のっけから、かなりの濃い依頼だ。

おっさんは財布から銀行のカードを

取り出そうとしたので、

「ちょ、ちょっと、落ち着いてください。

    どうしたんですか?」

と、名うての酒モンハンターで

あるはずの僕も、ここまでの

あまりの急展開に慌てた。

おっさんは、右手に銀行のカードを

持ったまま、ここまでに至る経緯を

話してくれた。

おっさんはもちろん酔っ払っていたので

話があっちゃ行ったり、

こっちゃ行ったりして、全貌を聞くのに、

1時間くらい掛かったのだが。

要約すると

おっさんは昨日、嫁と白浜に一泊旅行に

行ったのだという。

最初は仲良く旅行を楽しんでいたのだが、

途中で喧嘩になり、腹が立ったおっさんは

今朝、自分の荷物も嫁の荷物も全部持って

ホテルを出て、

一人で大阪に戻ってきたそうだ。

 

「奥さんも大人やから、

   勝手に帰ってくるんとちゃいます?」

僕が言うとおっさんは間髪を入れず、

「いや、嫁の財布も持ってきてるから」

と言った。

「えーっ!  じゃあ帰りの交通費が

    ないんですか?  ホテルに事情を話して、

     貸してもらえないんですかね?」

驚く僕にさらにおっさんからの追い打ちが。

「いや、俺、ホテル代も払ってきてないし、

   宿泊代も払ってない奴に

   お金は貸してくれへんやろ。」

 

喧嘩したとはいえ、財布も含めた嫁の荷物を

全て持って、ホテルの宿泊代も払わずに、

勝手に帰ってくるとは、このおっさん

なかなかのモンスターだ。

 

「そやから、兄ちゃんに、

    ホテルに電話してもらって、

    事情を話してもらって、宿泊代を

    振込に行ってもらおうと思って」

 

いや、電話も振込も自分で出来るやろ!

ってか、そもそも、こんなとこで

飲んでる場合とちゃうやろ!

 

と思いつつ、優しく、

「とりあえず、奥さんに電話して、

    話しした方がいいと思いますよ。」

と言うと、おっさんは平然と

こう言った。

「いや、嫁の携帯も持ってきたから。」

 

無茶苦茶や!

携帯もお金も荷物もなく、

白浜のホテルに取り残されてるって、

奥さん、かわいそ過ぎるわ!

 

この後、僕は、ホテルに電話し、事情を話し、

奥さんに電話を代わってもらい、事情を話し、

おっさんと銀行に行き、ホテルに振込し、

ホテルにもう一度電話をし、

入金を確認してもらい、

奥さんを解放してもらい、

おっさんと西九条駅前で別れた。

おっさんは終始、

「嫁に謝ったら許してくれるかな?」

と気にしていた。

 

あれ?

奥さんの帰りの交通費ってどうしたんだっけ?

僕も酔っていたので、覚えてない。

 

今回捕獲した酒モン

・悲哀タイプ

・レア度・・・☆☆☆☆☆

 

なりたいおっさん

今日も短編。

梅田の地下街の串カツ屋で見つけた

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)、

それが「なりたいおっさん」だ。

 

その店は、地下街にありながら、

屋台のような風情の立ち飲み屋さんで、

外の様子もよく見えた。

僕の隣で飲んでいた

ほどよく赤ら顔のおっさんが、

急に僕の腕をひっぱり、

店の外を指差した。

 

「兄ちゃん、見て!」

 

おっさんの指差す先には、

地下街を颯爽と歩く、美しい女性が。

もしかしたら、この美女は

おっさんの娘で、

兄ちゃんの彼女にどう?と

言ってくれるのではないか、

などとは全く思わず、

「綺麗な人ですねー」

と応える。

おっさんは、ビールを飲みつつ、

美女の後ろ姿を見送りながら、

こう言った。

 

「綺麗な子やなぁ。

   あんな風になりたいな。」

 

なりたいんかい!

やりたいんとちゃうんかい!

 

下品ですいません。

 

今回捕獲した酒モン

・高揚タイプ

・レア度・・・☆☆☆