酒モン ゲットだぜ!!

  酒を飲んでいた時に遭遇、捕獲したモンスター達について綴っていくブログです。

酒を飲んでいて遭遇したモンスター達について綴っていくブログです。 長編・短編・色々とございます。

握り放題のおっさん

一時期、JR野田駅大阪市)によく飲みに行っていた。

何軒かよく行く店があったのだが、

そのうちの一軒で2人組のおっさんに出会った。

おっさん2人は、最近、家の近所にできた寿司屋について語り合っていた。

「あの寿司屋、めっちゃ安いで」

「そうなん? お前、もう行ったん?」

「先週行ったんや。ビックリしたわ。1200円で寿司握り放題やぞ!」

「すごいな!」

 

いや、1200円で握り寿司食べ放題やろ!

1200円で寿司握り放題って、時給1200円の寿司屋のバイトや!

 

 

 

 

限りなくのおっさん

記念すべき一匹目のモンスターは、「限りなくのおっさん」で

いこうと思います。

 

もう10年くらい前、まだ大阪市西区九条に住んでいた時期の話である。

あの頃、九条の様々な店で飲み、それだけでは飽き足らず、

毎夜毎夜、自転車で周辺の西九条・野田・大正あたりを「パトロール」と

称して飲み歩いていた。そんな重点パトロール地域だった大正の、

商店街の外れの外れにあった場末のホルモン屋で出会ったのが、

“限りなくのおっさん” である。

なぜ、“限りなくのおっさん”なのかというと、

ただ単に、口癖が「限りなく」なのである。

  

たまたま僕と隣り合わせたそのおっさん。店のテレビではニュースが

流れていたが、そのニュースの内容についてブツクサ言っている。

こういう場末の飲み屋は、一人で静かに飲みたければ

このブツクサに無反応でいればよく、おっさんに絡まれたければ

このブツクサに反応すればいいという、非常に明確なルールで

運営されている。絡まれたがりの僕はもちろん、おっさんのブツクサに

反応して、モナリザのように少し微笑んだ。

すると気をよくしたおっさんはこっちに話しかけてきた。

「さっき、ワンダーフォーゲルのことをニュースでやってたやろ?」

「はいはい。」

ワンダーフォーゲルって何語か分かるか?」

「いえ、分かりません」

「限りなくドイツ語や」

 

え? 限りなくドイツ語?

ドイツ語にも、「少しだけドイツ語」とか「なんとなくドイツ語」とか

ランクがあって、その最上級が「限りなくドイツ語」なのだろうか?

 

おっさんの話は続く。

「兄ちゃん、仕事何してるん?」

「あ、まぁ、営業職です。」

「そうか。大変やろ?」

「ええ、まぁ。お父さんは仕事、何やってるんですか?」

「俺か? 俺は限りなく労務者のピンハネや」

 

え? 限りなく労務者のピンハネ

限りない金額をピンハネしてるのか、限りない数の労務者から

ピンハネしているのか、どういうことなのか?

 

その後も、「最近の夏は限りなく暑い話」や、

ある女性の乳首の色が「限りなく紫」だった話、

娘が可愛がっていた犬が、先日14歳で「限りなく死んだ」話を聞いた。

 

熱心に話を聞く僕は、おっさんに気に入られたようだ。

というか、もはや「限りなく」というフレーズが効きたいだけだったのだが、

「兄ちゃん、うち来るか? うちで飲みなおそか?」

と言われた。断る理由もないので、

「ぜひぜひ」と答えると、おっさんは店の人に、

「ホルモン、持ち帰りで頼むわ」と注文。

店の人に「何本焼きましょ?」と聞かれたおっさんは

「限りなく焼いてくれ!」と即答。

いや、何本か言うたれや! 店の在庫にも限りあるぞ!

 

店の人が適当に何本か焼いてくれたホルモンを持って、

おっさんの家に向かう。

おっさんの家はごく普通の一軒家だった。

「ただいま。」

「おかえり。え!?」

「あぁ、お客さんや。もうちょっと家で飲むから、ビール出してくれ!」

“限りなくのおっさん”  は、奥さんであろうおばはんに威勢よく言った。

「あ・・・はい・・・。

テンション低めのおばはん。

そりゃそうだろう。

22時を回った時間に、見たこともない男を連れて帰ってきて、

家で飲むなんて、迷惑にもほどがある。

僕も、お断りして帰ろうかと思ったが、“限りなくのおっさん”  を

もっと限りなく見ていたいというたい好奇心に負けて、

家に入らせてもらった。

台所の横の食卓で、奥さんが、嫌な顔一つせずの真逆の、

良い顔一つせず出してくれたビールを飲む。

おっさんは奥の部屋で着替えているようだ。

その奥の部屋から話し声が聞こえた。

 「ちょっと、あんた、何時やと思てるん?」

「ええやないか」

「ええことないわよ。もう遅いし、明日、私も仕事なんやで。」

「まぁ、ちょっと飲んだら解散するから、ええやないか。」

「大体、あの人、誰なん?」

「あぁ、あれは・・・、限りなく知らん兄ちゃんや。」

 このセリフを聞けたことで満足した僕は、

奥さんに突然の訪問を詫び、ビールのお礼を言った後、

“限りなくのおっさん”  の家を出た。