酒モン ゲットだぜ!!

  酒を飲んでいて遭遇・捕獲した酔っぱらいのモンスター達、略して「酒モン」について綴っていくブログ

酒を飲んでいて遭遇したモンスター達について綴っていくブログです。 長編・短編・色々とございます。

落語家だったじいさん

その日、僕はいつものように

淡路(大阪市東淀川区)で飲むことにし、

淡路の街を徘徊していた。

いつも同じ店ばかりなので、

久しぶりに新しい店を開拓したろかしらん、

と思い、かなり駅から遠いところまで歩き、

小汚い居酒屋を見つけた。

一見すると、店か自宅かどうか

分からないような外観で、

かなり入りにくかったが、

新規開拓をしなければいけないという、

謎の使命感で、思い切って店の扉を開けた。

 

その店は、カウンター席が5席くらいの

本当に小さな店で、店内に客はおらず、

かなり年配に見えるじいさんが

カウンターの向こうに座っていた。

そして、この店主のじいさん自身が

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)

だった。

 

じいさんは店内のテレビを見ながら

1人でビールを飲んでいた。

お世辞にも綺麗なお店とは言えず、

店内も少しカビ臭く、

嫌な予感しかしなかったが、

僕は瓶ビールと焼鳥を頼んだ。

 

じいさんはコップに入れた

自分のビールを飲みながら

僕に瓶ビールを出し、

明らかにスーパーで買ってきたであろう

焼鳥を古ぼけた電子レンジで温め、

僕の前に置いた。

僕は、そんなに冷えてない瓶ビールを

汚いコップに注いだ。

そして、ちゃんと温まってなくて、

中がまだ冷たい、

おそらく一本50円くらいで

スーパーで買ってきたであろう焼鳥を

食べながら、飲み始めた。

普通の人なら、この段階で怒るか、

すぐに店を出るかもしれないが、

僕は、めっちゃマニアックな店を見つけた!と

いう喜びで、かなりワクワクしていた。

 

しばらく上機嫌で店内の様子を見ながら

瓶ビールを飲んでいたのだが、

じいさんは、客の僕よりも早いペースで

瓶ビールを飲んでいた。

瓶ビールと焼鳥を片付けた僕は

さらに瓶ビールを追加し、

厚揚焼きを注文したのだが、

その時、じいさんは少し驚いた様子だった。

この店の様子からして、おそらく一見の客は、

一杯飲んだら退散する人が大半なので、

追加注文をした僕に驚いたのだろう。

それから、じいさんは急に心を開き、

僕に話し掛けてくるようになった。

 

向こうからは、定番の

「この辺に住んでるん?」

「元々、大阪の子?」

などの質問があり、僕からは

「いつからこの店やってるんですか?」

「おいくつなんですか?」

というような質問を返し、おっさんと

すっかり打ち解けた。

 

やがておっさんは、

僕が何の仕事をしてるのかを聞いてきたので、

ざっくり僕の仕事のことを説明した。

おっさんはその中に出てきた

「落語家さん」というキーワードに

「え?  落語家!?」

と、過剰に反応した。

僕が、落語に興味あるんですか?

と聞くと、じいさんは驚愕の返答をした。

 

「俺、昔、落語家やったんや。」

 

僕は驚いて、

そうなんですか!

誰のお弟子さんやったんですか?

と聞くと、じいさんは、

「昔から米朝さんの大ファンやねん」

と胸を張って答えた。

僕が、

え? お弟子さんじゃなくて?

ファンなだけですか?

と聞くと、じいさんは、

「うん。そやけど、わし、

    米朝さんの弟子よりも米朝さんが

    大好きやねん。

    そやから落語家みたいなもんやねん。」

と胸を張って答えた。

 

いや、じいさん!

米朝師匠の大ファン」=「落語家」と

ちゃうで!

もしそれで「落語家」を

名乗っていいんやったら、

僕は、広能組の組員で、

プロレスラーで、

警視庁特命捜査課の刑事で、

南斗鳳凰拳の伝承者で、

快傑ズバットで、

阪神タイガースの選手ですって、

名乗っていいことになるぞ!

 

この後も、この店にはたまに行ってましたが、

じいさんが飲み過ぎで体調を壊したのか、

いつの間にか、閉店してました。

悲しかったです。

 

今回捕獲した酒モン

・誤解タイプ

・レア度・・・☆☆