数年前から続く赤羽の大マイブーム、
そして一昨年からの
立石・青砥の大マイブーム、
さらに昨年からの
現在は、東京都江東区が
大マイブームとなっているが、
酒モンの話である。
え？ 大マイブームって何のことかって？
僕の中での大きなブームのことです。
分かってると思うけど。
その日、東京出張で、
17時過ぎに仕事を終えた僕は、
今日は江東区で飲んだろかしらん、と思い、
清澄白河駅周辺をうろちょろしていた。
路地の奥のいい感じのおでん屋さんを見つけ、
おでんで生ビールを何杯か飲み、
ほろ酔い気分で立ち寄った２軒目の店に、
酒モン（酒を飲んでて捕獲したモンスター）が
出現した。
その店は、入ってすぐのところに
カウンター８席くらいと
奥にテーブル席が３つくらいあるという、
「居酒屋の間取りを作って」と言われたら
誰もが思いつくような間取りの店だった。
僕は、すっかり赤い顔をして、
飛び込みで入ったのだが、
大将が愛想良く迎えてくれ、
僕は、常連さんと思しき
50代くらいのおっさんの隣の席に座り、
瓶ビールと刺身で飲み始めた。
大将に
「初めてだよね？」
と聞かれたので、
大阪から出張で来ていることを告げると、
「こんな裏通りの店には
近所の人しか来ないから、
大阪の人が来るなんて、珍しいね。
来てくれて、ありがとうね。」
と、とても喜んでくれた。
すると、隣で飲んでいたおっさんも、
「俺もこの店に20年近く通ってるけど、
大阪の人が飛び込みで入ってきたのは
経験ないな。お兄さん、絶滅危惧種だよ。」
と嬉しそうに言った。
「絶滅危惧種」って言葉は、
なんかニュアンスが違うな、
それを言うなら「希少種」と違うんかな？と
思いながらも、一見の僕を
すんなり受け入れてくれたことに安堵した。
おっさんは、ダボダボのグレーのスラックスに
白のワイシャツという、いかにも
「THE おっさん」といった風態だったが、
サイドをいい感じに刈り上げた髪型が
なんかオシャレだった。
その後、おっさんと色々と話をしたのだが、
僕が、この辺りはいい雰囲気ですよね、と
言うと、おっさんは
「俺は生まれた頃からずっとこの街に
住んでるけど、この辺りも地下鉄が出来て、
便利になってから新しい住民が増えたんだ。
でも、雰囲気は昔のままで、
住みやすくて、良い街だよ。」と、
しみじみと語ってくれた。
だが、この後、このおっさんが
酒モンであることが発覚したのだ。
「若い住民が増えたから、
カフェも増えたし、お洒落な居酒屋も
いっぱい出来たんだよね。」
おっさんは語る。
「俺はそんな店にも結構行くんだよ。
若い子がやってる店でも、
こんなおっさんを気持ちよく
迎えてくれるし、若いお客さんとも
話せるから、楽しいしね。」
僕は、
そうなんですね、
と相槌を打ったのだが、その後、
おっさんはとんでもないことを言い出した。
「ただ、外から見ただけだと、
お洒落な飲み屋とお洒落な美容院の
区別がつかないんだよね。
俺、酔っ払って２軒目に行こうと思って、
間違って、美容院に入っちゃったこと
あるもん。帰るのも申し訳ないから
髪の毛切ってもらったけどね。」
えーっ！
そんなことあるか！？
100歩譲って、酔っ払っている時に
お洒落な飲み屋と間違って
美容院に入ることはあっても、
普通は間違えましたって言って出るやろ！
僕が半信半疑で、
そんなことあるんですか？って
聞くと、おっさんは即答した。
「今までに４・５回あるよ。」
４・５回も！？
いや、多すぎるやろ！！
驚いている僕に、
おっさんはものすごい追い討ちをかけてきた。
「うん。だって、先週なんか、
それで、２回も髪の毛切ったもん。」
いやいや！
一週間に２回散髪って！
せめてその週の２回目の店は
居酒屋と間違ったって
素直に言うて、帰ろうや！
服装がおっさん丸出しなのに、
髪型だけがお洒落な理由が分かった。
もし、このおっさんが
お洒落な居酒屋とお洒落な服屋さんとを
間違って入ってしまったら、
おっさんはトータルですごいお洒落な
おっさんになるんやろか？
今回捕獲した酒モン
・迷走タイプ
・レア度・・・☆☆☆
