酒モン ゲットだぜ!!

  酒を飲んでいて遭遇・捕獲した酔っぱらいのモンスター達、略して「酒モン」について綴っていくブログ

酒を飲んでいて遭遇したモンスター達について綴っていくブログです。 長編・短編・色々とございます。

森の石松のおっさん

以前、「店番させるおっさん」という回で

蘇我千葉市中央区)のことを書いたが、

仕事で年2回くらい、

蘇我に泊まることがある。

今回も、その蘇我で捕まえた酒モンの話だ。

 

その日、僕は仕事があった幕張メッセを出て、

すぐに蘇我に移動し、ビジネスホテルに

荷物を置きに行く時間も惜しくて、

3泊分の大荷物を持ったまま

居酒屋に向かうことにした。

前年に蘇我に来た時に、

えらい目にあったので、

今年も是非えらい目に合いたいと思い、

濃い人が多そうな店を探して、突入した。

その店は座敷席しかない、

入口で靴を脱いで入るタイプの店で、

ベタな言い方で言うと、

「おばあちゃんの家みたいな店」だった。

 

店内にはお膳の席と

掘りごたつ式のカウンター席があり、

先客は1名しかいなかった。

靴を脱いで、店内に入った僕は、

掘りごたつ式のカウンター席の、

先客から2つくらい離れた席に座った。

え?  「掘りごたつ式のカウンター席」って、

意味分からん?

座敷やねんけど、カウンターがあって、

足下は掘りごたつみたいになってて、

椅子に座ってるみたいな感じで

座れる席やんか。

説明、難しいな・・・。

 

とにかく僕は席につき、瓶ビールを頼んだ。

ママの手作りだという

付き出しの煮物をつまみながら、

瓶ビールを飲みつつ、メニューを見ていると、 

海が近いからか、

魚関係のメニューが充実している。

早速、刺身と煮魚を注文し、

店内にあった大画面のテレビに目をやると、

BSか何かの旅番組が流れていた。

苔むした山の中に生えている

大きな杉の木が映っていたのだが、

苔と杉の葉の緑色と、太い杉の幹の茶色との

コントラストがすごく美しかった。

僕は思わず、「綺麗やなぁ」と言ったのだが、

その言葉に先客のおっさんが反応した。

 

「たしかに綺麗だよね」

おっさんは流暢な標準語で、

こちらに話しかけてきた。

ホンマに綺麗ですよね、と僕も

ネイティブスピーカー丸出しの

関西弁で応える。

 

「ああいう山の中に生えてる巨大な木って

 神秘的だし、とても神々しいよね。

 屋久島とか行ってみたいんだけどな。」

おっさんは標準語検定 準一級くらいの

バッチリの発音で言った。

 

しかしこの後、おっさんは

とんでもないことを口にした。

「俺、有名な森の石松ってのも

 まだ見たことないんだよね。」

 

一瞬、何を言っているのか、

意味が分からなかったが、

どうやらおっさんは、

森の石松」を「羽衣の松」みたいな、

景勝地にある松の木のことだと

思っているらしい。

恐ろしいまでのおっさんの勘違いに、

生粋の関西人である僕も

ツッコむべきかどうか悩んで、

一瞬フリーズしていると、

店のママが無慈悲に

森の石松は人の名前!」と言い放った。

 

「え!?」

驚くおっさん。

 「森の石松は、清水の次郎長の子分で、

 江戸時代の侠客なのよ。」

「あ、そうなの・・・?」

ママの説明に小さな声で返事をするおっさん。

そこにまた、ママの冷徹な一言が。

「侠客の意味も分かってないでしょ?」

 

もうグロッキーになっている人間を、

さらに馬乗りになり、マウントパンチで

ボコボコにする様な恐ろしいママの言葉。

うなだれるおっさんに、

さっきまで標準語を自由自在に操っていた

ティーボーイの面影はなかった。

いやまぁ、元々、なかったけど。

 

その後、ゆっくり話をしたところ、

おっさんは「森の石松」を

「どこかの森の中にある、

    大きな石の上に生えている松の木」だと

思っていたらしい。

おっさんは、すごく恥ずかしがっていて、

「こんな間違ったことを言っているところを

    知り合いに見られなくてよかったよ。」

と、ホッとしていた。

 

いや、ホッとするのはまだ早いですよ!

僕がブログで、全世界に向けて

発信することにしました!!

 

酒モンハンターもまた、

無慈悲で冷酷なのである。

 

 今回捕獲した酒モン

・誤解タイプ

・レア度・・・☆☆☆