酒モン ゲットだぜ!!

  酒を飲んでいて遭遇・捕獲した酔っぱらいのモンスター達、略して「酒モン」について綴っていくブログ

酒を飲んでいて遭遇したモンスター達について綴っていくブログです。 長編・短編・色々とございます。

薬物使用疑惑のおっさん

今回の話は、捕獲した

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)の

話ではなく、自分自身が酔っ払って

酒モンになった時の話なので、

書くかどうか迷ったが、

内容的に今が旬のタイミングの話なので

書かせていただきます。

 

その頃、僕は社会人になって2年目で、

学生時代に住んでいた神戸市東灘区の

アパートにそのまま住んでいた。

社会人になり、ボーナスも少しだがもらえて、

念願の自動車を購入し、

近くの駐車場を借りていた。

駐車場のオーナーさんは、近所の酒屋の

ご夫婦で、毎月の駐車場代は振込ではなく、

その酒屋に持参することになっていた。

安月給だったので、2ヶ月とか3ヶ月滞納して、

まとめて払いに行くこともよくあったが、

オーナー夫婦は怒りもせず、

「もう支払ってくれへんのかと思った」と

ニコニコ笑いながら言ってくれるような、

いいオーナーさんだった。

そんなオーナー夫婦にも欠点があった。

駐車場代を支払いに行った時に、

旦那さんの晩酌に付き合わないと

いけないのだ。それだけ聞くと、

「タダ酒を飲めて、いいやん」と思うかも

しれないが、旦那さんはすごい大酒飲みで、

夕方の6時に支払いに行くと、下手すると

日が変わるくらいまで、5〜6時間くらい.

晩酌に付き合わないといけなかった。

 

ある金曜の夜、僕は会社帰りの19時過ぎ頃に

2ヶ月分溜まっていた駐車場代を

支払いに行った。案の定、旦那さんは

酒屋の奥にあるテーブルで飲んでいて、

「お~い、今日も飲んで行くやろ?」

と満面の笑みで僕を呼び、

一緒に飲むことになった。

僕が席に着いた時、奥さんが、

ビニール袋に入った乾燥した草のようなものを

僕に手渡し、こう言った。

「この前、お腹が弱いって言うてたやろ?

 これ、丹波の山で採れた薬草を

    干したやつやねん。

 漢方薬としても売られている草で、

 少しずつちぎって白湯と一緒に飲んだら、

    お腹が弱いのも治るで。」

 

このご夫婦は、神戸市内に大きな駐車場を

いくつも持っているくらいの資産家で

兵庫県の北部に別荘も持っていて、

週末はそこで農作業などをして過ごしていた。

そこで採れた胃腸に効くという薬草を、

よく下痢をすると言っていた僕にくれたのだ。

そしてご想像通り、この乾燥した草のせいで、

後にとんでもないことになるのだった。

 

こうして大酒飲みの旦那さんと、

お酒は飲まないがよく喋る奥さんと、

僕の、3人の酒宴がスタートした。

旦那さんはビール党で、話をしながら、

ひたすら500mlの缶ビールを飲み続けた。

つまみはお店で売っている乾き物だ。

1時間が過ぎ、2時間が過ぎても、

宴は一向に終わる様子もなく、

気がつけば旦那さんと僕で、

500mlの缶ビールを20本近く飲んでいた。

 

「もう飲めないです・・・。」

かなり酔っぱらった僕がそう告げても、

「若いのに何を言うてるねん!

    明日も休みやろ?  もっと飲もや!」

と旦那さんは言い、さらに宴は続く。

文字通り、売るほどに酒があるので、

もうお酒もなくなったから

この辺でお開きで、ということもない。

 

結局、この日も、旦那さんが眠くなる

夜中の1時くらいまで酒宴は続いた。

大げさではなく、テーブルの上は、

500mlの缶ビールの空き缶だらけに

なっていた。たぶん、500mlの缶ビールを

1人15本以上は飲んでいたと思う。

僕はお店を出て、徒歩5分くらいのアパートに

帰ろうと歩き出したのだが、

すっかり酔っ払って、まっすぐ歩けない。

そして、1分ほど歩いたところで、

深さ50センチほどの溝に落ちてしまった。

そこから這い上がろうとするが、

頭がクラクラして、なかなか這い上がれない。

そこに運悪くパトカーが通りかかった。

優秀な日本の警察官は、

夜中に溝から這い上がろうとして、

なかなか這い上がれない男を

すぐに不審者と認定し、

パトカーを停車し、車から降りてきた。

「どうしたんですか?」

警察官は僕に聞く。

「酔っ払って、溝に落ちたんですが、

    フラフラでうまく這い上がれなくて。」

僕は正直に答える。

警察官は、二人で僕の手を引っ張って、

溝から救い出してくれた。

そして、

「この辺に住んでいる方ですか?

 一応、身分証明書とか

    見せてもらえますか?」

と聞いてきた。

 僕は上着のポケットから財布を出し、

免許証を見せたが、

その時、ポケットに入っていた

「ビニール袋に入れられた乾燥した草」も

出てきた。

優秀な日本の警察官は、

夜中に溝に落ちて、

フラフラな男が持っている

乾燥した草を見て、即座に怪しいと判断し、

「これなに?」

と聞いてきた。

僕は、

「さっきもらった薬草です」

と正直に答えるが、優秀な日本の警察官は、

薬草という響きに敏感に反応した。

「薬草!? ちょっと聞きたいことがあるから、

 そこの交番まで一緒に来てくれる?」

僕はパトカーに乗せられ、

最寄りの交番に行くことになった。

交番に着き、椅子に座り、話を聞かれる。

日本の優秀な警察官は、とにかく

「この草は何?」

の一点張りだった。

僕は、

駐車場のオーナーのところに

駐車場代を払いに行ったこと、

そこでビールをめちゃくちゃ飲んだこと、

薬草はそこの奥さんにもらったということを

何度も説明したが、

ベロンベロンに酔っていたので、

呂律もまわらず、うまく伝わらない。

 

「とにかくそこの酒屋さんに聞いてください」

と頼んだのだが、もう深夜なので、

酒屋さんに電話しても、出ないみたいで、

なかなか僕の無罪は証明されない。

 

「そもそも、ビールだけで

    そんなにおかしくならないでしょ?」

日本の優秀な警察官は、

ビールの力を過小評価していた。

「ビール以外に、その薬草を使って

    何かしてない?」

日本の優秀な警察官は、

薬草の力を過大評価していた。

 

小一時間そんな押し問答をしているうちに、

ようやく酒屋に電話が繋がったようで、

奥さんが薬草は自分が採ったもので、

漢方薬にもなっているものだと説明してくれ、

僕はなんとか無罪放免となった。

交番を出る時、日本の優秀な警察官に

「今度から、ややこしいことしないでね」

と言われた。

 

おい!

お前らが勝手に間違ったんや!

 

と思ったが、酔っぱらい過ぎて、

フラフラだった僕は大人しく帰宅した。

もう20年も前の話である。

そして、自らの証言によると、

ミュージシャンで個性派俳優でもある

あの人は、この頃から本物を

やっていたそうである。

 

今回捕獲した酒モン

・迷走タイプ

・レア度・・・☆☆