酒モン ゲットだぜ!!

  酒を飲んでいて遭遇・捕獲した酔っぱらいのモンスター達、略して「酒モン」について綴っていくブログ

酒を飲んでいて遭遇したモンスター達について綴っていくブログです。 長編・短編・色々とございます。

飛びだすおっさん

今回は某阪神沿線の駅で捕獲した

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)

の話である。

なぜ今回に限って、

駅名や地区名を書かないかというと、

その界隈には飲み屋が一軒しかなく、

店が特定されるのを恐れたからだ。

何を恐れているのかは

自分でもよく分からんけど・・・。

 

とにかく、そのお店は

カウンター7席くらいの小さなお店で、

地元の常連さんでいつもいっぱいだった。

というか、地元の常連さん以外で

この店に来てるのは、

僕だけかもしれない。

それくらい地域に密着した、

よそ者には入りにくいお店だったが、

店主のママさんが作る手料理がおいしく、

常連さんも優しいので、本当に良い店だった。

 

ある日、そのお店で飲んでいると、

一年中、ニット帽を被っている

常連のおっさんが、

「今日の消防団の見回り、

 しんちゃんらしいで!」

と言いだした。

他の常連さんも、そうなんや、

と口々に言いだしたので、

新参者の僕にも、しんちゃんという人が

この店の常連であることが分かった。

そしてニット帽のおっさんが、

「しんちゃんが見回りにきたら、

 全員で店の前に出て、

    整列して手を振ろか!」

と言いだした。

常連さんたちは、

オモロいな! 絶対に喜ぶで! 

やろうやろう!   ということになり、

もちろん僕も参加することにした。

しばらくすると、遠くの方から、

「火の用心!」という

スピーカーからの音声が聞こえてきた。

みんなで外に出ると、はるか向こうに

赤色灯を灯した車が見え、その方向から

「火の用心!」が聞こえてくる。

僕はてっきり、拍子木をうちながら、

歩きで回ってくるのかと思ったが、

どうやら、消防団の車に乗って

見回りをしているようだ。

車はどんどん店の前に近付いてくる。

店内にいた常連さんたち、僕、

そしてママさんも店の前に出て、整列する。

車がすぐそばまで来た時、

みんなが車に向かって、

一斉に手を振り出した。

が、車はスピードを一切緩めない。

そのまま通過しそうな勢いだったので、

ニット帽のおっさんはたまらず、

「お~い! しんちゃん!」

と言いながら、道路に飛び出した。

 

その時にそこにいた全員が、

こういうシーンを思い浮かべたはずだ。

消防団の車が停車し、

手を振る僕たちの様子を見た

しんちゃんは満面の笑みで、

「みんな、わざわざ店の外に

 出てきてくれてたん?

 見回りが終わったら

 店に来るから、一緒に飲もな!」

というようなシーンを。

しかし、現実は全く違った。

 

飛び出したニット帽のおっさんに対して、

消防団の車から、

ものすごいクラクションが鳴る。

そして、急停車した車から、

男性が降りてきて、

「おっさん、なに飛び出してきてるねん!

 死にたいんか! この酔っぱらい!!」

と罵声が飛ぶ。

新参者の僕にも、車を運転していたこの人が

しんちゃんという人ではないことが分かった。

 

その後、みんなは暗い顔で店内に戻り、

また飲みだした。

ニット帽のおっさんは、

「でも、しんちゃんが、見回りの当番、

 今日やって言うてた・・・」

と何度も力なく呟いていた。

 

今回捕獲した酒モン

・悲哀タイプ

・レア度・・・☆☆☆☆