酒モン ゲットだぜ!!

  酒を飲んでいて遭遇・捕獲した酔っぱらいのモンスター達、略して「酒モン」について綴っていくブログ

酒を飲んでいて遭遇したモンスター達について綴っていくブログです。 長編・短編・色々とございます。

大荷物のおっさん

ある日の平日、

仕事のストレスがすごいので、

昼から飲むことにした。 

場所は大阪市此花区の西九条。

かなりの下町のはずなのに、当時は

昼から飲める店がほとんどなかった。

僕の知る限り、王将ともう一軒くらい。

そのもう一軒の方の店に行き、飲み始めた。

すると、隣に大きなスーツケースを

2つも持ったおっさんが座っていた。

これこそが、本日の

酒モン(酒を飲んでて捕獲したモンスター)、

大荷物のおっさんだ。

こういう気軽に昼飲みできるような

居酒屋に、ここまでの大荷物を

持って来る人は珍しい。

基本、近所の人しか来ないからだ。

その珍しく大荷物を持っているおっさんは、

ものすごく暗い顔で飲んでいる。

もしかして、夜逃げかな?

それなら話をしてみたいな。

そう思っていると、おっさんが

話し掛けてきた。

 

「ちょっと、ここのホテルに電話して、

    振込先を聞いて、俺の代わりに

    銀行で振込してきてくれへん?」

 

のっけから、かなりの濃い依頼だ。

おっさんは財布から銀行のカードを

取り出そうとしたので、

「ちょ、ちょっと、落ち着いてください。

    どうしたんですか?」

と、名うての酒モンハンターで

あるはずの僕も、ここまでの

あまりの急展開に慌てた。

おっさんは、右手に銀行のカードを

持ったまま、ここまでに至る経緯を

話してくれた。

おっさんはもちろん酔っ払っていたので

話があっちゃ行ったり、

こっちゃ行ったりして、全貌を聞くのに、

1時間くらい掛かったのだが。

要約すると

おっさんは昨日、嫁と白浜に一泊旅行に

行ったのだという。

最初は仲良く旅行を楽しんでいたのだが、

途中で喧嘩になり、腹が立ったおっさんは

今朝、自分の荷物も嫁の荷物も全部持って

ホテルを出て、

一人で大阪に戻ってきたそうだ。

 

「奥さんも大人やから、

   勝手に帰ってくるんとちゃいます?」

僕が言うとおっさんは間髪を入れず、

「いや、嫁の財布も持ってきてるから」

と言った。

「えーっ!  じゃあ帰りの交通費が

    ないんですか?  ホテルに事情を話して、

     貸してもらえないんですかね?」

驚く僕にさらにおっさんからの追い打ちが。

「いや、俺、ホテル代も払ってきてないし、

   宿泊代も払ってない奴に

   お金は貸してくれへんやろ。」

 

喧嘩したとはいえ、財布も含めた嫁の荷物を

全て持って、ホテルの宿泊代も払わずに、

勝手に帰ってくるとは、このおっさん

なかなかのモンスターだ。

 

「そやから、兄ちゃんに、

    ホテルに電話してもらって、

    事情を話してもらって、宿泊代を

    振込に行ってもらおうと思って」

 

いや、電話も振込も自分で出来るやろ!

ってか、そもそも、こんなとこで

飲んでる場合とちゃうやろ!

 

と思いつつ、優しく、

「とりあえず、奥さんに電話して、

    話しした方がいいと思いますよ。」

と言うと、おっさんは平然と

こう言った。

「いや、嫁の携帯も持ってきたから。」

 

無茶苦茶や!

携帯もお金も荷物もなく、

白浜のホテルに取り残されてるって、

奥さん、かわいそ過ぎるわ!

 

この後、僕は、ホテルに電話し、事情を話し、

奥さんに電話を代わってもらい、事情を話し、

おっさんと銀行に行き、ホテルに振込し、

ホテルにもう一度電話をし、

入金を確認してもらい、

奥さんを解放してもらい、

おっさんと西九条駅前で別れた。

おっさんは終始、

「嫁に謝ったら許してくれるかな?」

と気にしていた。

 

あれ?

奥さんの帰りの交通費ってどうしたんだっけ?

僕も酔っていたので、覚えてない。

 

今回捕獲した酒モン

・悲哀タイプ

・レア度・・・☆☆☆☆☆